(さっさ、ざっざ。砂浜にうまれた穴には影がうもれている。ぱしゃん、ざばん。おだやかに打ち寄せる波にさらわれない場所で、直線的ではない自由気ままな足あとのパレードがつづく。足あとを浮き彫りにするかのように、空はすこしずつ明るく染まりだしていた。のんびり砂浜をゆくむすめの視線は、海のほう。きらきらでゆらゆらな波間のもようは、きっともう、星のダンスじゃあない。だから視線を進行方向に戻したとき、夜が遠ざかる砂浜で見つけたシルエットに向けるあいさつは、こうだった。)おはようございます。ふふ、早起きさんね。(かるくさがった頭と一緒に、しっぽがゆれる。普段よりはすこし声を張ってみたけれど、届いたかしら。その結果はとかく、声をかける前と変わらない歩みで、のんびりと相手のほうに近づこうとした。)あ。昨日の余韻でねむれなかった…、なんて可能性もあるのかしら。昨日はたのしめた?歓迎会。(手をぽんと打つ代わりに、しっぽがピン!とひらめいて。昨日ひらかれたツアー参加者の歓迎会会場がある方角へ、ふと視線を向けてみた。けれど、そこは重大な議題ではなかったから、すぐさま顔はまっすぐ前にもどったろう。それゆえに、どう?って首をかしげてみせながらも、起きぬけの太陽のまなざしに目をほそめて言葉があふれだす。)いい朝ね。