(釣り大会。島暮らしを始めて一週間と少し、歓迎会の次に行われたイベントがそれだった。好奇心旺盛ゆえ、釣りなぞした事もなかったけれど昼過ぎに会場へ赴き申し込めば、釣竿と餌用の裂きイカを貰って海へと向かった。冬の海は寒かろうてフェイクファーの首襟が着いたダウンコートに、薄ピンクのもこもこ耳あて。オフホワイトのニット帽に、グレーの手袋。コートの中はといえば昨日エイブルシスターズでお買い上げしたギンガムチェックのワンピースに、裏起毛黒タイツ。等々、防寒着もお洒落心を忘れる事なくばっちり着こなした。さて、申し込み会場から歩いて割とすぐに海辺へと到着すれば、周りには何人かやはり釣り大会の参加者らしき人影が散っていた。ハリィも頑張るのですわ、と気合を入れれば、早速餌を付けて海へと投げ入れてみる。――釣りしてる感だけでも楽しいですわ!とちょっとした感動を味わいつつ、数分後。くいっと引っ張られた糸の先に、獲物の予感。が、)まっ、待ってくださいまし、ハリィは、海には、入らな、い、です、わっ(ぐぐぐ、と引っ張られる力に、ずりずりと浜辺を引きずられていく。なんとか踏ん張りながらすぐ近くに人影を察知すれば、)た、たすけてくださいまし(懇願するように其方へ視線を向け、――る余裕もなかった。ただただ踏ん張ることしかできない。)