(大きな尾は中々布団に収まり切らない。ふるりと体躯が強張る程の寒さに目が覚めて、そんな尾を抱えるように腕の中へと閉じ込めて寝直そうと目を瞑り三秒。)………っは、(慌てた様に布団を剥いで上体を起こし、丸窓へと視線を向ければ向こう側は辺り一面銀世界だ。朝一にして大層重苦しい溜息を吐き出して、頭を抱えてたっぷり十秒。然しいつまでもそうしているわけにはいかず、重たい腰を起こして布団を後にすれば着物へ着替えて羽織を着込む。それだけでこの寒さは耐え切れず、鈍色の帽子を被り首許には臙脂色のマフラーをぐるぐると巻き付けて。雪掻き用のスコップと朝食代わりのオレンジを手に寒空の下へ。朝から精を出して社周辺の雪を掻き分け、午前中の内に作業を終えることは叶ったがその頃には指先も随分冷えていた。雪にはそれなりに耐性があったものだから、掌で口許を覆う様にして息を吹き掛ければそれだけで幾分かマシだ。辺りは人が歩けるくらいには綺麗に成ったが、掻き分けた雪の山はさてどうしたものか。無論そのままにしておいても構わなかったが、どことなく侘しい情感が芽生えてしまったものだから掌を伸ばして慣れた手付きで形作ってゆく。あっという間に狐耳らしきものが生えたかまくらの完成だ。愛着も湧いてしまって中へと七輪と川釣りの魚を持ち運ぶ際、)……お。昨日の夜から随分降ってたから…今日は一段と寒いな、おはよう。良かったら温まっていくといい、今から魚も焼くぞ。(偶然鉢合わせた人物への誘い文句はそれだ。)